2012年08月08日
【WCS2012】国際シンポジウム「エンタテイメントとしての聖地巡礼とコスプレ」
徳島「マチ★アソビ」東方ファンが訪れる諏訪エリア現地の現状も発表!!WCS2012国際シンポジウムが、2012年8月1日名古屋大学内文系カンファレンスホールにて開催。2009年より4回目を迎えるこの学術文化交流会、日本のマンガ・アニメ・コスプレが海外へ与える影響についての発表の場として、注目が集まっています。今年は、近年ファン活動として活発化しているコンテンツツーリズム「エンタテイメントとしての聖地巡礼とコスプレ」をテーマに研究者が登壇。同人ゲーム「東方Project」による聖地巡礼や徳島「マチ★アソビ」の取組み、また海外から見た日本の作品舞台への訪問活動や日本側からの情報発信と捉え方等についての発表があり、非常に興味深い内容が続きました。
開会にあたり、主催のホフ・エドマンド氏(カナダ・名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程)より挨拶。2003年より始まった世界コスプレサミットの歴史について簡単な紹介。ホフ氏は、2003年より通訳として参加。現在、通訳兼オーガナイザーとしてこのサミットで活躍中。当初2003年のサミットでは、各国代表から、日本のアニメ・マンガがどのように受け入れられているか世界のコスプレ事情の情報交換するトークショーとして開催されていました。2005年愛知万博開催時には、各国代表によるコンテストイベントとして変化。2009年より国際シンポジウムとして現在のような形になり今年で4年目になります。これまでのシンポジウムでは、「世界に向けてコスプレの影響と日本の捉え方(2009)」「サブカルチャーとしてのコスプレ(2010)」「マンガ・アニメ・ゲーム業界におけるコスプレの役割(2011)」海外へ発信される日本のアニメ・マンガとともに日本文化の最新ファッション・ポップカルチャーの1つとしてコスプレが認識される中で、今年2012年は、作中舞台「聖地巡礼」とコスプレとの関わりについて「エンタテイメント」とは、自分の為のものか、他の人が楽しむものかということに触れながら、観光産業研究に携わるパネリスト招聘しての発表の場となりました。
【聖地巡礼と行政の関与】
(中村仁 氏 (兼モデレーター・東京大学大学院情報学環特任講師))
聖地巡礼活動の中で、「エンタテイメント」との意味についての解説からスタート。日本ではディープに関与するこの言葉、英語圏では、もっと軽い意味を持つとのこと。今回は、WCS2012公式サイトにて、聖地を巡る動画も公開されていることも紹介。近年アニメマンガゲーム等のファンが自分の好きな作品に登場する舞台を訪問することが活発化するなかで、これらは「聖地巡礼」と呼ばれ、この文化はコスプレと同じく、大切な二次派生文化1つとして見られている。日本国内では新しく注目されたこり観光は、海外の目からはどう映るのか。第4回の開催となる今回はこの社会現象古来から行われてきた宗教的な聖地巡礼やコスプレ文化等の比較の視点から考えます。
・「アニメ・ゲームの舞台を巡る」 過去の人気作品の中で、実際に聖地巡礼活動が垣間見ることの出来た作品について、今回紹介されました。インターネットがまだ普及しない頃、当時は口コミでのファン活動が主体。例えば「オホーツクに消ゆ」(1984・北海道)/美少女戦士セーラムーン(1992-1997・東京麻布付近)/天地無用(1992-1993・岡山県)/魔法騎士レイアース(1993-1996・東京タワー)/センチメンタルクラフティ(1998・坪尻駅) 北へ・・・(1999・北海道) Kanon(1999・守口駅) おねがいティーチャー(2002・木崎湖)などが例に挙げられます。 ・アニメゲームと行政の関わり 顕著な形で現れたのは、東京都三鷹市で、キャラクターをポスターに採用し人気を集めた事例が紹介。(注:当時は、中央線沿線に主要アニメ制作会社が点在) その後総務省・警察庁・警視庁例えば「機動戦艦ナデシコ」(1996-1997)のキャラによるシートベルト着用啓発ポスターにも注目と人気が集まったエピソードも。エヴァ放映当時は、あまり聖地として訪れる人が無かった箱根町も最近では意識した形での観光誘致の取組みを行ったり、東京都や兵庫・西宮市も観光客の誘致啓発に取り組んでいるとのこと。 これまで、作中舞台を明言しないアニメ作品が多い中で、最近では、意識的に作品の舞台を明示した作品群も徐々に登場し始めてた変化が表れています。例えば、・あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない(2011・埼玉県秩父市)/・あの夏でまっている(2012・長野県小諸市)/・ももへの手紙(2012・広島県呉市)/・花咲くいろは(2012・石川県)/・ちはやぶる(滋賀県大津市) この部分、作品として現地が舞台背景として外せないものもあり、観光誘致・啓発を意識したものとに分かれそう。
【観光から聖地巡礼を考える】
(出口竜也 氏(和歌山大学観光学部教授))
次に登場した出口竜也氏の発表では、本来の「観光」の意味についての解説。「いろいろなものを見て回ること」が行動原則としてあり、近年の嗜好の多様化に伴い、世界的な「観光」の傾向は、
-「物見遊山」から「体験」「交流」へ
-「団体」から「個人」・「グループ」へ
と、団体行動よりも個人小グループでの観光活動に移行、内容も、二極化・多様化・細分化と旅行者の嗜好は多岐にわたる形に。また「周遊」型から「滞在」型へ、留まった形での観光が好まれるとのお話。
そして、宗教的意味合いの「聖地巡礼」と、マンガアニメファンの聖地巡礼の共通点と違いについての解説。「そもそも聖地巡礼とは?」ある特定の宗教において重要な意味を持つとされる地域(聖地)を訪れることで、直線型巡礼(キリスト教(サンチャゴ・コンポステーラ巡礼)・イスラム教(メッカ・メディナ巡礼))と回遊型(仏教・四国八十八か所(いわゆるお遍路)/・西国三十三か所)が例に挙げらります。
そして、そもそも「巡礼」とは
信者が非日常異日常空間に身を置いて、日頃行わない(行えない)行為を行うことで、自分自身のこれまでを振り返りながら、心身を鍛え(あるいは心身を浄化し)生まれ変わり、日常に戻ること であり、また再び「日常」に戻ることの重要性をチェック。
転じて、現在の聖地巡礼とは?
ドラマや映画、さらには近年ではマンガ・アニメ・小説(ライトノベル)などの物語の舞台となった場所やスポーツなどの名勝負の舞台となった場所など、本人にとって思い入れのある場所を「聖地」と呼び、ここを実際に訪れ、あこがれや興奮に思いを馳せ、日常に戻ること。舞台としてゆかりの深い場所に身を委ねることにより、非日常への旅行と日常への復帰の共通部分があることの解説。
そして観光学としての現在の問題提議。「乱立する聖地」観光地としての「聖地づくり」ブームの様相が活発化し、・「聖地」を作って客を呼ぶ ・「〇〇の聖地の〇〇」その結果、日本全国「聖地」だらけになりつつあることを危惧。
最近の動きの中での聖地作りの事例としては、アニメ制作会社「ufotable」によるの働きかけの事例。この場合、制作会社・近藤光社長の出身地が徳島であり地元貢献を含めて「徳島スタジオの設立」・「ufotable cafe」オープン、この流れの中での 徳島市観光協会とのコラボ企画-阿波おどりポスター・うちわなどの制作、また、まちおこしイベントとしての「マチ★アソビ」の試みや「ufotable cinema」オープンと多岐にわたった地元への貢献が良い形で現れている成功例なのかもしれません。
ファンが訪れたくなる「「聖地」が「聖地」でありつづけるために」のポイントは、
-「神聖性」を持続し続けること
-熱狂的な「信者」を持ち続けること
-「信者」間の楽しい交流があること
-飽きさせないこと(常に新たな発見があること)
-がっかりさせないこと
の5ポイントが重要。観光原則として、観光は「感幸」であり「勧交」でもあることを元に(1)素晴らしい「光」を「観る」ことができる「聖地」(2)「幸せ」を「感じる」ことができる「聖地」(3)「交わる」ことに「歓び」を感じることができる「聖地」がポイント。この3つを感じることの出来る聖地に人は来る!!(注・滋賀の某所は無意識で実践していますね)
逆に観光地開発としての問題点注意点「安易な「聖地」づくりにご注意!!」
Xよそがやっているからうちも・・・
Xアニメでまちおこししたら人が来るかも
XB級グルメで観光客に気楽に来てもらおう
X旅行会社にツアーを作ってもらおう
底の浅い物語に人は魅力を感じません!!初級者は初級者なりに、中級者は中級者なりに、そして上級者は上級者なりに満足できる物語の用意を この部分は、歴ドラによる観光啓発も通じる部分があると感じます。
まとめとして、人間の行動原理として、そこにしかなくて、そこに行かない価値があり、それがほしい場合には人はどんなにお金がかかってもどんなに不便でもそれを求めてやってくるもの。その部分が、ファンを現地に向かわせる行動の原動力になるのかもしれません。
【神と人の物語の聖地巡礼と諏訪の神々】
(出口弘 氏(東京工業大学大学院総合理工学研究科教授))
登壇時にコミックマーケット一桁から参加経験があると自己紹介された出口弘氏は、同人参加者向けに砕いた形での日本の祭事活動と、現在人気を集めている東方ジャンル参加者に人気のある長野県諏訪エリアでの聖地探訪・神社巡礼の実態について分かりやすい発表。
マンガコンテンツが世界に与える影響として、国境を越えた個からの物語と意味の流通が可能となる物語コミュニケーション時代が世界的に始り、漫画はその表現のフロンティア。プロ漫画家だけでなく多くの普通のアマチュアが漫画の表現を媒体として様々な作品を発表し、それが読み手に共有される。漫画・アニメ・ライトノベル・ゲームは絵物語(Visual Narratives)の四つの上流として位置づけられるとの解説から実際の神事とファンの関わりについて続けられました。
・神と人の物語がクロスする聖地巡礼
神々が作った物語の縁の地へ参加する行為としての聖地巡礼、今や人が語る物語の聖地と神々の聖地の巡礼がお互いにクロスオーバーしつつある
・日本と西洋の対比
日本の八百万の神々の祭典て聖地の基礎概念
神社の祭り:神社のオンリーイベント / 神職と氏子:御祭神オンリーイベントの主催の地元同人、お祭りのコスプレあり / 同人誌:ご由緒書きやお札を配布 / 講中:聖地巡礼中の「同人」グループ 例えば、神有月の出雲は、神様のオールジャンルイベントと見なされるのではないかとの意見。
対して、西洋の神様:基本オンリーイベントで世界最大発行部数を誇る同人誌を持つ。/ 主催者がうるさいのでコスプレには注意! / キャラソン等に熱心 / いくつかの分派を持ち一緒の会場だと仲が悪い。
同人誌即売会・コスプレイベントに置き換えた形での神事の比較。行事的に日本の神事は元々ゆるやかで、大らかな部分があり、寛容である。また祭事の鉾は、長物(?)扱い。
また、ファンが奉納する痛絵馬についての活動解説も。奉納された絵馬を見る限り、純粋な願いをする部分において、これらファンの奉納された絵馬は、純真な願いが込められていると写真を交えた説明がありました。
また、巡礼の聖地「上社前宮前になぜ巡礼休憩所が出来たか-ゆっくり茶屋誕生秘話-」では、地元では、営業的にリスクの高いロケーションで開店した喫茶店に偶然訪れたファンからの提案と、それを受け入れた店舗のあたたかい交流経過についての、成功エピソードの発表もあり、東方ファンへの受け入れや訪問者増加による成功事例として、非常に興味深いエピソードでした。
最後に、出口弘氏は、先行して2009年に東京大学出版より「コンテンツ産業論」を出版されており、ぜひ一読してほしいとのお話でした。
<書籍情報>
「コンテンツ産業論 - 混淆と伝搬の日本型モデル-」
ジャパニーズコンテンツの源は何か
出口 弘 編, 田中 秀幸 編, 小山 友介 編 東京大学出版(2009.09)
http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-040247-7.html
【聖地巡礼という現象と外国人ファン】
グラスプール・ルーシー(名古屋大学国際言語文化研究科博士課程)
日本を訪れている各国代表チームの受入れに活躍したルーシーさんは、今回参加した代表チームと同行しているオーガナイザーメインバーにアンケートを実施。日本国内で探訪旅行として人気の高い「聖地巡礼」の言葉の認知度と、外国人の視点から見た潜在的な観光資源や情報要望についての発表を行いました。
今回の発表では、「聖地巡礼(seichi junrei)」という言葉を聞いたことがあるかという質問に対して、回答者は、「ある」40%「ない」60%と6割の人がまだ、日本側から発信されている語彙に対して認識が薄いことが判明。では、実際に海外のファンはどのような形で、日本国内の作中舞台についての情報を得ているか。例えば観光サイトとして「Japan Anime Map」という情報が、海外向けに公開されていることを紹介。
また、イワブチ・コイチ氏によると外国人のファンが好きなアニメに対して日本のファンと同じように「obsessively devoted」である。英語の「devotion」は意味として、熱愛・忠義・信心と言う言葉が挙げられるとのこと。海外サイト「Anime Pilgrimages」というブログによると、実際に日本を訪れ作中舞台の聖地巡礼として、比較レポートケースあり。例えば、「ひぐらしの鳴く頃に」(岐阜・白川郷)『こんなpilgrimageに行くおかげで、アニメのキャラの世界に入ることが出来たような気持ちになって、彼らに近づいた感じがします』との感想も挙がっている。実際に現地に行くことの喜びは、日本人も海外のファンも同じ気持ちに浸れるのかもしれません。
Google検索によるキーワードヒット数比較では、「seichi junrei」5000未満に対して、「Anime Pilgrimage」1万ヒット「Anime Tourism」2万ヒット以上となり、観光情報発信として、現在どんなキーワードを使うと情報伝達の効果があるのかの解説も。
また、ガイドとして「JAPAN ANINE TOURISM GUIDE」の存在もあり。
学術論文としては、「Anime Tourism」という用語を利用した論文「Anime tourism:discursive construction and reception of the Stidio Ghibli Art Museum(Raya Denison,Japan Forum22:3-4,2010)も、自治体としての積極的な取り組みは、埼玉県の「Saitama Tourism PR Anime」によるオンライン上での観光誘致の取り組みが行われています。
【事後ディスカッション・質疑】
・例えば東京タワーのように元々の観光地が聖地になるケースもある。ただ、聖地として意識した観光啓発はなく、作品のブームが去ると忘れ去られる。
・ファンがリピーターになるきっかけはどこにあるのかが重要
・日本のアニメ作品が海外観光地に与えた影響例として、フィンランドのムーミン村 オランダ・フランダース、スイス(アルプスの少女ハイジ)等が挙げられる。
・参加者からの最後質問では、滋賀・豊郷町を訪れているファンからの質問。現在来訪者が減少する中で、「聖地」の終わり方があるのかとの質問に対し、各パネリストからは、これまでは観光振興について、継続させることが研究の主体で終わり方は考えたことはないとの回答。例えばテレビドラマのように期間が区切られた終わり方の例はある。また鉄道会社が、観光誘致のマスコットとして動物を採用している場合、そのマスコットが居なくなった場合が参考になるかとも。聖地が継続するにあたり、その場所の物語が生きているかどうかも重要なポイントとなりえるとのコメントも。
今回のシンポジウムでは、開催発表が直前に行われたこともあり、参加者は学生や関係者が主体で40名ほどの参加。
パネリスト参加者からは、「世界コスプレサミットの行事として、シンポジウムはぜひ再び開催してほしい」との要望も。
また、質疑応答の時間が足りず、コスプレイヤーに対しての巡礼先現地の受け入れの取組みや制作会社からの聖地公認について影響のディスカッションが出来なかったことは、ちょっと残念でした。
【関連情報】
・世界コスプレサミット公式
同・2012国際シンポジウム告知
・WCS Facebookページ特集
ANAで行くアニメ・マンガ・ゲームのロケ地
・「IS JAPAN COOL?」 ANA日本観光誘致PR
【パネリスト】
・出口弘 氏(東京工業大学大学院総合理工学研究科教授)
・出口竜也 氏(和歌山大学観光学部教授)
・グラスプール・ルーシーさん(名古屋大学国際言語文化研究科博士課程)
進行
・中村仁 氏(兼モデレーター)(東京大学大学院情報学環特任講師)
司会
・ホフ・エドマンド 氏(名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程)
WCS2012 シンポジウムパネリストとゲスト
左からルーシー・出口弘氏・コスプレ(前中央)2012韓国チーム(後両端)2012イタリアチーム・司会エド・出口竜也氏・中村仁氏
【聖地巡礼と行政の関与】(中村仁 氏 (兼モデレーター・東京大学大学院情報学環特任講師))
聖地巡礼活動の中で、「エンタテイメント」との意味についての解説からスタート。日本ではディープに関与するこの言葉、英語圏では、もっと軽い意味を持つとのこと。今回は、WCS2012公式サイトにて、聖地を巡る動画も公開されていることも紹介。近年アニメマンガゲーム等のファンが自分の好きな作品に登場する舞台を訪問することが活発化するなかで、これらは「聖地巡礼」と呼ばれ、この文化はコスプレと同じく、大切な二次派生文化1つとして見られている。日本国内では新しく注目されたこり観光は、海外の目からはどう映るのか。第4回の開催となる今回はこの社会現象古来から行われてきた宗教的な聖地巡礼やコスプレ文化等の比較の視点から考えます。
・「アニメ・ゲームの舞台を巡る」 過去の人気作品の中で、実際に聖地巡礼活動が垣間見ることの出来た作品について、今回紹介されました。インターネットがまだ普及しない頃、当時は口コミでのファン活動が主体。例えば「オホーツクに消ゆ」(1984・北海道)/美少女戦士セーラムーン(1992-1997・東京麻布付近)/天地無用(1992-1993・岡山県)/魔法騎士レイアース(1993-1996・東京タワー)/センチメンタルクラフティ(1998・坪尻駅) 北へ・・・(1999・北海道) Kanon(1999・守口駅) おねがいティーチャー(2002・木崎湖)などが例に挙げられます。 ・アニメゲームと行政の関わり 顕著な形で現れたのは、東京都三鷹市で、キャラクターをポスターに採用し人気を集めた事例が紹介。(注:当時は、中央線沿線に主要アニメ制作会社が点在) その後総務省・警察庁・警視庁例えば「機動戦艦ナデシコ」(1996-1997)のキャラによるシートベルト着用啓発ポスターにも注目と人気が集まったエピソードも。エヴァ放映当時は、あまり聖地として訪れる人が無かった箱根町も最近では意識した形での観光誘致の取組みを行ったり、東京都や兵庫・西宮市も観光客の誘致啓発に取り組んでいるとのこと。 これまで、作中舞台を明言しないアニメ作品が多い中で、最近では、意識的に作品の舞台を明示した作品群も徐々に登場し始めてた変化が表れています。例えば、・あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない(2011・埼玉県秩父市)/・あの夏でまっている(2012・長野県小諸市)/・ももへの手紙(2012・広島県呉市)/・花咲くいろは(2012・石川県)/・ちはやぶる(滋賀県大津市) この部分、作品として現地が舞台背景として外せないものもあり、観光誘致・啓発を意識したものとに分かれそう。
【観光から聖地巡礼を考える】(出口竜也 氏(和歌山大学観光学部教授))
次に登場した出口竜也氏の発表では、本来の「観光」の意味についての解説。「いろいろなものを見て回ること」が行動原則としてあり、近年の嗜好の多様化に伴い、世界的な「観光」の傾向は、
-「物見遊山」から「体験」「交流」へ
-「団体」から「個人」・「グループ」へ
と、団体行動よりも個人小グループでの観光活動に移行、内容も、二極化・多様化・細分化と旅行者の嗜好は多岐にわたる形に。また「周遊」型から「滞在」型へ、留まった形での観光が好まれるとのお話。
そして、宗教的意味合いの「聖地巡礼」と、マンガアニメファンの聖地巡礼の共通点と違いについての解説。「そもそも聖地巡礼とは?」ある特定の宗教において重要な意味を持つとされる地域(聖地)を訪れることで、直線型巡礼(キリスト教(サンチャゴ・コンポステーラ巡礼)・イスラム教(メッカ・メディナ巡礼))と回遊型(仏教・四国八十八か所(いわゆるお遍路)/・西国三十三か所)が例に挙げらります。
そして、そもそも「巡礼」とは
信者が非日常異日常空間に身を置いて、日頃行わない(行えない)行為を行うことで、自分自身のこれまでを振り返りながら、心身を鍛え(あるいは心身を浄化し)生まれ変わり、日常に戻ること であり、また再び「日常」に戻ることの重要性をチェック。
転じて、現在の聖地巡礼とは?
ドラマや映画、さらには近年ではマンガ・アニメ・小説(ライトノベル)などの物語の舞台となった場所やスポーツなどの名勝負の舞台となった場所など、本人にとって思い入れのある場所を「聖地」と呼び、ここを実際に訪れ、あこがれや興奮に思いを馳せ、日常に戻ること。舞台としてゆかりの深い場所に身を委ねることにより、非日常への旅行と日常への復帰の共通部分があることの解説。
そして観光学としての現在の問題提議。「乱立する聖地」観光地としての「聖地づくり」ブームの様相が活発化し、・「聖地」を作って客を呼ぶ ・「〇〇の聖地の〇〇」その結果、日本全国「聖地」だらけになりつつあることを危惧。
最近の動きの中での聖地作りの事例としては、アニメ制作会社「ufotable」によるの働きかけの事例。この場合、制作会社・近藤光社長の出身地が徳島であり地元貢献を含めて「徳島スタジオの設立」・「ufotable cafe」オープン、この流れの中での 徳島市観光協会とのコラボ企画-阿波おどりポスター・うちわなどの制作、また、まちおこしイベントとしての「マチ★アソビ」の試みや「ufotable cinema」オープンと多岐にわたった地元への貢献が良い形で現れている成功例なのかもしれません。
ファンが訪れたくなる「「聖地」が「聖地」でありつづけるために」のポイントは、
-「神聖性」を持続し続けること
-熱狂的な「信者」を持ち続けること
-「信者」間の楽しい交流があること
-飽きさせないこと(常に新たな発見があること)
-がっかりさせないこと
の5ポイントが重要。観光原則として、観光は「感幸」であり「勧交」でもあることを元に(1)素晴らしい「光」を「観る」ことができる「聖地」(2)「幸せ」を「感じる」ことができる「聖地」(3)「交わる」ことに「歓び」を感じることができる「聖地」がポイント。この3つを感じることの出来る聖地に人は来る!!(注・滋賀の某所は無意識で実践していますね)
逆に観光地開発としての問題点注意点「安易な「聖地」づくりにご注意!!」
Xよそがやっているからうちも・・・
Xアニメでまちおこししたら人が来るかも
XB級グルメで観光客に気楽に来てもらおう
X旅行会社にツアーを作ってもらおう
底の浅い物語に人は魅力を感じません!!初級者は初級者なりに、中級者は中級者なりに、そして上級者は上級者なりに満足できる物語の用意を この部分は、歴ドラによる観光啓発も通じる部分があると感じます。
まとめとして、人間の行動原理として、そこにしかなくて、そこに行かない価値があり、それがほしい場合には人はどんなにお金がかかってもどんなに不便でもそれを求めてやってくるもの。その部分が、ファンを現地に向かわせる行動の原動力になるのかもしれません。
【神と人の物語の聖地巡礼と諏訪の神々】(出口弘 氏(東京工業大学大学院総合理工学研究科教授))
登壇時にコミックマーケット一桁から参加経験があると自己紹介された出口弘氏は、同人参加者向けに砕いた形での日本の祭事活動と、現在人気を集めている東方ジャンル参加者に人気のある長野県諏訪エリアでの聖地探訪・神社巡礼の実態について分かりやすい発表。
マンガコンテンツが世界に与える影響として、国境を越えた個からの物語と意味の流通が可能となる物語コミュニケーション時代が世界的に始り、漫画はその表現のフロンティア。プロ漫画家だけでなく多くの普通のアマチュアが漫画の表現を媒体として様々な作品を発表し、それが読み手に共有される。漫画・アニメ・ライトノベル・ゲームは絵物語(Visual Narratives)の四つの上流として位置づけられるとの解説から実際の神事とファンの関わりについて続けられました。
・神と人の物語がクロスする聖地巡礼
神々が作った物語の縁の地へ参加する行為としての聖地巡礼、今や人が語る物語の聖地と神々の聖地の巡礼がお互いにクロスオーバーしつつある
・日本と西洋の対比
日本の八百万の神々の祭典て聖地の基礎概念
神社の祭り:神社のオンリーイベント / 神職と氏子:御祭神オンリーイベントの主催の地元同人、お祭りのコスプレあり / 同人誌:ご由緒書きやお札を配布 / 講中:聖地巡礼中の「同人」グループ 例えば、神有月の出雲は、神様のオールジャンルイベントと見なされるのではないかとの意見。
対して、西洋の神様:基本オンリーイベントで世界最大発行部数を誇る同人誌を持つ。/ 主催者がうるさいのでコスプレには注意! / キャラソン等に熱心 / いくつかの分派を持ち一緒の会場だと仲が悪い。
同人誌即売会・コスプレイベントに置き換えた形での神事の比較。行事的に日本の神事は元々ゆるやかで、大らかな部分があり、寛容である。また祭事の鉾は、長物(?)扱い。
また、ファンが奉納する痛絵馬についての活動解説も。奉納された絵馬を見る限り、純粋な願いをする部分において、これらファンの奉納された絵馬は、純真な願いが込められていると写真を交えた説明がありました。
また、巡礼の聖地「上社前宮前になぜ巡礼休憩所が出来たか-ゆっくり茶屋誕生秘話-」では、地元では、営業的にリスクの高いロケーションで開店した喫茶店に偶然訪れたファンからの提案と、それを受け入れた店舗のあたたかい交流経過についての、成功エピソードの発表もあり、東方ファンへの受け入れや訪問者増加による成功事例として、非常に興味深いエピソードでした。
最後に、出口弘氏は、先行して2009年に東京大学出版より「コンテンツ産業論」を出版されており、ぜひ一読してほしいとのお話でした。
<書籍情報>
「コンテンツ産業論 - 混淆と伝搬の日本型モデル-」
ジャパニーズコンテンツの源は何か
出口 弘 編, 田中 秀幸 編, 小山 友介 編 東京大学出版(2009.09)
http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-040247-7.html
【聖地巡礼という現象と外国人ファン】グラスプール・ルーシー(名古屋大学国際言語文化研究科博士課程)
日本を訪れている各国代表チームの受入れに活躍したルーシーさんは、今回参加した代表チームと同行しているオーガナイザーメインバーにアンケートを実施。日本国内で探訪旅行として人気の高い「聖地巡礼」の言葉の認知度と、外国人の視点から見た潜在的な観光資源や情報要望についての発表を行いました。
今回の発表では、「聖地巡礼(seichi junrei)」という言葉を聞いたことがあるかという質問に対して、回答者は、「ある」40%「ない」60%と6割の人がまだ、日本側から発信されている語彙に対して認識が薄いことが判明。では、実際に海外のファンはどのような形で、日本国内の作中舞台についての情報を得ているか。例えば観光サイトとして「Japan Anime Map」という情報が、海外向けに公開されていることを紹介。
また、イワブチ・コイチ氏によると外国人のファンが好きなアニメに対して日本のファンと同じように「obsessively devoted」である。英語の「devotion」は意味として、熱愛・忠義・信心と言う言葉が挙げられるとのこと。海外サイト「Anime Pilgrimages」というブログによると、実際に日本を訪れ作中舞台の聖地巡礼として、比較レポートケースあり。例えば、「ひぐらしの鳴く頃に」(岐阜・白川郷)『こんなpilgrimageに行くおかげで、アニメのキャラの世界に入ることが出来たような気持ちになって、彼らに近づいた感じがします』との感想も挙がっている。実際に現地に行くことの喜びは、日本人も海外のファンも同じ気持ちに浸れるのかもしれません。
Google検索によるキーワードヒット数比較では、「seichi junrei」5000未満に対して、「Anime Pilgrimage」1万ヒット「Anime Tourism」2万ヒット以上となり、観光情報発信として、現在どんなキーワードを使うと情報伝達の効果があるのかの解説も。
また、ガイドとして「JAPAN ANINE TOURISM GUIDE」の存在もあり。
学術論文としては、「Anime Tourism」という用語を利用した論文「Anime tourism:discursive construction and reception of the Stidio Ghibli Art Museum(Raya Denison,Japan Forum22:3-4,2010)も、自治体としての積極的な取り組みは、埼玉県の「Saitama Tourism PR Anime」によるオンライン上での観光誘致の取り組みが行われています。
【事後ディスカッション・質疑】
・例えば東京タワーのように元々の観光地が聖地になるケースもある。ただ、聖地として意識した観光啓発はなく、作品のブームが去ると忘れ去られる。
・ファンがリピーターになるきっかけはどこにあるのかが重要
・日本のアニメ作品が海外観光地に与えた影響例として、フィンランドのムーミン村 オランダ・フランダース、スイス(アルプスの少女ハイジ)等が挙げられる。
・参加者からの最後質問では、滋賀・豊郷町を訪れているファンからの質問。現在来訪者が減少する中で、「聖地」の終わり方があるのかとの質問に対し、各パネリストからは、これまでは観光振興について、継続させることが研究の主体で終わり方は考えたことはないとの回答。例えばテレビドラマのように期間が区切られた終わり方の例はある。また鉄道会社が、観光誘致のマスコットとして動物を採用している場合、そのマスコットが居なくなった場合が参考になるかとも。聖地が継続するにあたり、その場所の物語が生きているかどうかも重要なポイントとなりえるとのコメントも。
今回のシンポジウムでは、開催発表が直前に行われたこともあり、参加者は学生や関係者が主体で40名ほどの参加。
パネリスト参加者からは、「世界コスプレサミットの行事として、シンポジウムはぜひ再び開催してほしい」との要望も。
また、質疑応答の時間が足りず、コスプレイヤーに対しての巡礼先現地の受け入れの取組みや制作会社からの聖地公認について影響のディスカッションが出来なかったことは、ちょっと残念でした。
【関連情報】
・世界コスプレサミット公式
同・2012国際シンポジウム告知
・WCS Facebookページ特集
ANAで行くアニメ・マンガ・ゲームのロケ地
・「IS JAPAN COOL?」 ANA日本観光誘致PR
【パネリスト】
・出口弘 氏(東京工業大学大学院総合理工学研究科教授)
・出口竜也 氏(和歌山大学観光学部教授)
・グラスプール・ルーシーさん(名古屋大学国際言語文化研究科博士課程)
進行
・中村仁 氏(兼モデレーター)(東京大学大学院情報学環特任講師)
司会
・ホフ・エドマンド 氏(名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程)
WCS2012 シンポジウムパネリストとゲスト左からルーシー・出口弘氏・コスプレ(前中央)2012韓国チーム(後両端)2012イタリアチーム・司会エド・出口竜也氏・中村仁氏





















